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タイムシェアはプロベートの対象になるのか否か |
はじめに |
一般的に、土地、家、コンドミニアム等を含む、いかなる不動産の種類は、プロベートの対象になります。タイムシェアの全ては「不動産」の部類には該当せず、「動産」の部類に該当することがあるにも関わらず、いかなる種類のタイムシェアであっても、通常はプロベートの対象になってしまいます。 |
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タイムシェアの利点と落とし穴 |
タイムシェアの利点の一つとしては、比較的安値で、購入できることです。従って、ハワイ等の「夢のリゾート」にて、「バケーション・ホーム」を所有することを可能にします。しかし、タイムシェアは「不動産」、または「動産」としてのいずれかの部類に振り分けられていることに関わらず、所有者の死後、プロベートの対象になってしまうため、追加的な弁護士費用や、プロベートを完了させるために掛かる時間を及ぼすことになってしまいます。 |
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タイムシェアがプロベートを回避するための、エステート・プランニング |
タイムシェアのプロベートを回避するために、事前計画を立てることも可能です。ハワイでは通常、タイムシェアは所有者が完全に不動産を所有する形態のFee Simple Property (完全所有不動産権)ではないため、タイムシェアに対し、Transfer on Death Deed (死因贈与契約)を作成することは困難です。しかし、トラストを作成することは可能であり、タイムシェアをそのトラストの中に譲渡することはできます。遺言書も作成することはできますが、遺言書はプロベートの対象となってしまいます。タイムシェアに対し、きちんとしたエステート・プランニングをする手段が比較的少ないため、タイムシェアにおいては、生前売却してしまう、または最初から購入することに対し、良く考えてから実施する方が良いかもしれません。 |
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まとめ |
タイムシェアはプロベートの対象にもなる、特殊な不動産形態であるため、それを所有した際、エステート・プランニング等について、弁護士に相談することをお勧めします。 |
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税理士島田亮子によるゲスト記事 |
ジョイント・テナンシーの課税関係
~夫婦で購入したハワイのコンドミニアム~
1、概要 夫婦がジョイント・テナンシーという形態で不動産を所有した場合、一緒にその不動産を100%所有することになります。夫が亡くなると、サバイバーシップ(生存者への権利帰属)の原則に基づき、残された所有者である妻に自動的に権利が移ります。例えば、遺言で「その不動産は長男に相続させる」と書いてあっても、ジョイント・テナンシーが組まれている不動産は相続財産にはあたらないので、必ず妻が引き継ぐことになります。
夫が日本人の場合の準拠法は日本法となり、民法が適用されることになりますが、不動産については財産所在地のハワイ州の法令が優先され、ジョイント・テナンシーについての夫の権利は相続人間で協議することなく妻に移ることになります。英米法系の国に財産を所有する場合、プロベートという裁判所手続きの対象となる可能性が高いですが、ジョイント・テナンシーはプロベートを回避する策としても有効です。
2、購入時
日本居住者である夫婦がハワイでジョイント・テナンシーを組んでコンドミニアムを購入する際に、夫が全額資金負担をしたことにより、2分の1相当について妻にみなし贈与として課税された事例があります(名古屋地裁平成29年10月19日判決)。現地の不動産屋のアドバイスでジョイント・テナンシーを組んだようですが、日本の贈与税については説明を受けていなかったようです。
3、売却時
仮に何十年も前に夫婦名義で購入し、贈与税は時効になっている場合でも売却時にはそれぞれ譲渡申告をする必要があり、売却代金はそれぞれの名義人に帰属します。
日本人がハワイの不動産を売却した場合には、ハワイ州と連邦に源泉所得税を支払う必要があります。また、譲渡益が発生する場合には米国と日本の譲渡申告も必要となりますが、外国税額控除の適用を受けることにより二重課税を回避することができます。
4、相続時
では売却せずに1のように夫の相続を迎えた場合、相続税の課税対象となるのでしょうか。答えは被相続人の死亡による権利の増加は、対価を支払わないで利益を受けた場合に該当するため、夫の権利相当額について妻が贈与により取得したものとみなされることになり(相法9)、夫から相続又は遺贈により財産を取得した場合には生前贈与加算により相続税の課税対象となります。
ハワイにコンドミニアムをお持ちの方は、ご自身がどのような所有形態をしているか一度確認されることをお勧めします。
2006年に辻󠄀・本郷 税理士法人入社。これまで10年以上、主に個人資産に関する税務に携わり、相続税申告や相続税対策、資産管理会社の設立など、個人資産に係る幅広いコンサルティングに対応している。現在は国際資産税部部長として、国際案件にも積極的に取り組んでいる。
辻・本郷税理士法人 国際資産税部
税理士 島田亮子
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